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2007.12.28

資料:【半世紀前の改憲論争】③ 神川 vs 飛鳥田

50-kenpou-ronsou.jpg
飛鳥田
「現行憲法の上に立っておる国会ですから、みずからの存立の基礎に対して無効宣言をするなどということは、ちょっとできないことじゃないか。」

「またこの無効宣言をすべき対象である憲法の九十六条を利用して改正する。…これまた非常な矛盾じゃないか。」

「国内法的には、それでは占領軍命令ですか。

神川
「その当時の法律が果して御議論のように無効かどうか、そういう議論がありますが、私が申したのは事実を申したのでありまして、事実がその通りであったから…事実を曲げるわけにはいかない。

国内法的には、むろん占領軍命令ですけれども、それをどう取り扱うかということは、日本政府なり、あるいは議会なりの方針による。」

6番目の質問者は、社会党・飛鳥田一雄(あすかた いちお)氏。飛鳥田氏は弁護士で、後に社会党の委員長を務めることになる人物です。論客だけあって、舌鋒鋭く自民党の御用学者・神川氏(国際政治学者)を追い詰めていきます。

散々、神川氏に憲法無効論をしゃべらせ、最後には、「日本国憲法は国内法的に占領軍命令」と言わせることに成功しました。

2人のやりとりの全文は国会会議録検索システムで公開されていますので、そのまま転載します。



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○山本委員長
飛鳥田一雄君。

○飛鳥田委員
皆さんがたくさんお聞きになりましたので、私はあまりお聞きすることはないんですが、一番最初に神川先生にお願いをしておきたいと思うのです。

と申しますのは、先生から非常にたくさんのことをお話しいただきましたが、先生の、現行憲法は、結局するところ占領軍命令にすぎないというお説は、これはりっぱなお説として私は同感はいたしませんが、尊敬をいたします。ただしかし、いろいろそういうお話がありました中で、私たちどうしても納得できないというよりは、むしろ先生のために惜しむような事実がありましたので、一つお願いをして、そういうことのないようにお願いをしたいと思います。

まず第一は、占領中にできた法律、政令、そういうものはみなどんどん失効していく、こういうお話がありましたが、これは政令三百二十五号のようなものだけがなくなっておるので、刑事訴訟法とか民法の中の親族相続法とか、そういうわれわれの生活を規律している法律は少しもなくなっておりません。それですから、何でも論理の飛躍をさせて、占領中のものはみなだめになってしまったなんというおっしゃり方は、僕らのようなしろうとならいいのでありますが、説得力のためにもおよしをいただきたいと思います。

それからもう一つ考えましたのは、この憲法は、元来ならば国会が無効宣言をする方がいい、それが正しいというお話でありました。しかし、これも、国会は現行憲法に対して無効宣言をする資格はないと私は思っております。と申しますのは、現行憲法の上に立っておる国会ですから、みずからの存立の基礎に対して無効宣言をするなどということは、ちょっとできないことじゃないか、こう考えるのであります。これを先生は、平然と無効宜言をするのがよろしいとおっしゃったのでありますが、こういうことも、非常に小さなことではありますが、大勢の人々を誤まりますので、ぜひお供しみをいただきたい。はなはだ無礼な言い方でありますが、こう考えます。

しかも無効宣言をすべきこの現行憲法を改正するに当って、またこの無効宣言をすべき対象である憲法の九十六条を利用して改正する、こういうお話でありましたが、これまた非常な矛盾じゃないかというふうに私たち考えるのであります。こんな点三つ、四つ感じましたので、一つ御考慮をいただきたいと思います。

そこで、私の伺いたいと思います第一の点は、さっき中村先生がお申し述べになった点ですが、現行憲法の制定をいたしますに当っては、先生のおっしゃったように、あるいけマッカーサー元帥の方から草案が出たのかもしれませんが、その草案は少くとも国民に周知されておりました。これは新聞にも出ました。国民はこの草案を知る機会を十分に持ったわけです。しかも、その草案を国民が見ましてから総選挙が行われました。国民はこの草案を十分に検討するいとまを与えられ――現実にしたかしないかは別ですが、いとまを与えられて総選挙が敢行せられ、総選挙の結果新たなる議会が召集をせられて、この議会の中で現行憲法の審議が進んだわけであります。

もしそうだとすれば、私たちはこの憲法の審議について、議会は国民の負託を受けておった、こう考えてよろしいのじゃないか、こう考えるわけです。神川先生も、事実ですからお認めをいただけると思います。

そこで進んで、それではそうした国会の審議に対してどれだけの干渉があったのか、どれだけ議員が議会の中における言論を制約せられたのか、このことを一つ伺いたいと思います。これは何といっても、憲法が制定をせられる場合に、制定意思というものは国民の意思であるはずです。

マッカーサーから問題が出たということだけを強調することによって、今申し上げたように草案を知り、その上に総選挙があってできた議会の意思を無視することはできないはずです。そこで、マッカーサーの方から出たということを強調なさるのならば、同時に、これを審議した国会にどのような制約が与えられたか、こういうことまで考えていただきませんと、この憲法が占領軍の命令だとは言い切れないと思うのです。

そこで、国会に対して具体的にどのような干渉があり、どのように議員が言論を制約せられたかということを、私たち不幸にして知りませんので、お教えをいただきたいと思います。

○神川参考人
飛鳥田先生の法律家という立場から御提出になりました幾つかの点につきまして、私はすべて先生の御意見には賛成できませんから、そのことを申し上げます。

飛烏田先生は、占領中にできたものでもまだちゃんと残っているものがあるじゃないか、全部一網打尽になくなったわけじゃないじゃないかと言われましたが、それは当然なことなのでございます。たとい国際法上当然失効すべきものであっても、国内法上それを失効さすかどうかは国内法上の問題なのでありまして、国際法上の問題ではありません。

でありますから、日本の政府なり議会なりが占領中にやった改正でも、それを直す必要がない、そのまま踏襲していいと思えば、むろんそのままちゃんと有効なんでありまして、それを国内法上の手続で変えない限り有効であるということは、最初に私が申し上げたわけでございます。

つまり、国際法上は当然ポストリミニアムの法則で無効なんだけれども、しかしながら、国内法上の手続でそれをすぐに無効にするかどうかは、これはまた別個の問題でございます。これは法律家の飛鳥田先生には釈迦に説法と思いますけれども、その点で一つ誤解のないようにお願い申し上げたいのであります。

いろいろ問題がございましたけれども、また、なるほどマッカーサーの方で作ったのかもしれぬけれども、しかし、憲法草案としては民衆にも知らされ、また議会にも付託したではないか。それは日本の議会が主権的な議会であったか、ほんとうに独立の立法権があったかどうかという法律問題であります。もしも日本の議会が主権的な議会であり、主権的な国民の代表であったならば、そうした権利がございましたでしょう。

しかしながら、遺憾ながらマッカーサーの絶対的武力独裁制のもとにやった議会でありますから、そういう非常な制限があったわけであります。すべてのことはマッカーサー司令官が決定した。議会が議会であるかどうかは、最後の決定権があるかどうかの問題であります。幾ら議会が議論したところで、最後の決定権はスキャップの意見できまり、こちらできめる権限は何にもないというのでは、実際法牢上から言えば無価値ではありませんか。

なるほどやったでありましょう。しかしながら、現にそのやったことが伏せられているのです。衆議院において特別委員会というものができたでしょう。そのうち十四人の小委員会ができた。なぜその小委員会の記録というものは発表しなかったのです。発表するのは当然なことです、いやしくも民主議会とかなんとかいう看板を掲げている以上は。なるほど特別委員会の議事録は出ていましょうが、小委員会の議事録というものは発表されていない。

そして、聞くところによると、そういう議事録というものは、二重帳簿だそうです。何でもマッカーサーの方へ出したのとこっちへしまってあるのは違っているそうであります。これは聞いたのでありますから、果してそうであるかどうか知りません。二重帳簿のような議事録を作らなければならぬ議会が、どうして独立の議会と言えましょう。

ですから、なるほどそういうようなカムフラージュをやりました。そうしないと、日本をだますわけにいきませんから、カムフラージュはやりました。しかし、幾らカムフラージュをやったところで、とにかく主権的権限を持っていない、決定権がない議会というものは、議会の尊厳がございません。そこです、私の言うのは。だから、果して当時の議会にそういう尊厳があったかどうかという問題でございます。これが最後の問題でございます。

もう一つ私に注意しろと言われたのは、何でしたでしょうか。

○飛鳥田委員
いや、それはけっこうです。今の先生のお説によりますと、その当時の議会はすべて主権がない、こういうお話でありますが、主権のない議会の作った法律に、私たちは、今まで拘束されて参りました。こういうことは、逆に言えば、日本国民を非常に侮辱なすった御言説だと思うのです。

私たちが主権のない議会の作った法律のため拘束されるなんて、そんなばかな話はありません。私たちは、ここに日本国民の意思があったことを認めないわけにいかない。ただ、国際的な関係においては制限を受けておった場合もあり得るでしょう。

しかし、部分的に国際的な関係において制約を受けておった事実をとらえて、全般的に国会の持っている主権性をすべて奪ってしまうような御議論は、いささか論理の飛躍がありはしないか。ここで直接占領してきたやり方と間接占領をしてきたやり方との違いまでも一切無視して――それは同じ占領という言葉になるかもしれませんが、しかしその間のニュアンスを抹殺してしまっていく御議論は、少し乱暴に過ぎはしないか、こういうふうに私は思うわけです。

今お説のありました秘密議事録、これは私が先頭に立って公開を要求いたしております。しかし自民党の諸君は、絶対に公開して下さらないわけです。きっと自民党にとって不利なことがたくさんあるでしょう。そう私たちは想像しております。少し横道にそれますが、私たちは一切の資料を見て吾を決したい、こう願っておりますので、その資料を故意に遮断しようとしておられる自民党の態度に、今お叱りをいただいて非常にうれしく思います。どうぞ自民党の諸君が神川先生のお説に従うように、お願いをしたいと思います。

ともかく、そうした形で、この国会が何らの意思を持ち得なかったという御言説に対しては、私たちはうなずけないものがあるわけです。かりに、もし先生のようなお説でありますならば、占領中の一切の法律の無効宣言をしなければならぬのじゃないか。それが、先生のお説に従っておりますと、やむを得なかったのだ、だから暫定的に有効性を認めようというような御議論のようですが、その辺の法律的な論理的な見解を伺わしていただきたいと思います。

○神川参考人
飛鳥田先生の御議論、私は法律的に見て承服できないのであります。

なるほど議会がいろいろの議決をやったことはその通りでございます。従って、その当時の法律が果して御議論のように無効かどうか、そういう議論がありますが、私が申したのは事実を申したのでありまして、事実がその通りであったから、私はその方の専門の研究家という立場から申したのでありまして、事実だけのことです。事実を曲げるわけにはいかない。

事実その通りなんでありまして、遺憾ながらマッカーサーの絶対的軍事独裁制のもとにおける議会というものは、ある意味においてはナンセンスでありまして、そこでどんなことをやられたか知りませんが、それは独立国の議会とはまるで違ったものなんでございます。だから、この事実はいかんともすることができない。ただ事実を私は申し上げたのです。ですから、私は決して侮辱も何もいたしません。当時の日本としては、それは絶対不可抗力なものであったでございましょう。それは事実です。決してそれがために軽蔑なんかいたしません。ただ学者として客観的事実がそうだということを申し述べるだけのことでございます。

ところが、その議会でやったことを保存するかどうかは、その後の議会なり政府なりの態度いかんによるわけでありまして、また政府なり議会なりで、これは占領中にやったものではなはだおもしろくないから再検討しなければならぬ、これはやはり作り変えなければならぬ――私はそう思いますが、そういう御方針ならば、それを議論をされた方がいいと思います。私ならば直していただきたいと思っております。ところが、今まで憲法すら直さなくてもいいというのでありますから、憲法付属の法律やその他には全然手をつけていないのは当然であります。

まず憲法を直さなければ、こういうものを直すことはむずかしい点が多々あります。ですから、私はまず憲法を直して、そして憲法以下の法律というものは漸次御検討を願いたい、こう考えておるわけであります。でありますから、これはただ日本人が怠慢なんです。

日本人が、まだ占領治下にあってやったことがほんとうの独立国の議会でやったことと同じだという錯覚に陥っておるから、そう考えておるのでありまして、だから、その錯覚を訂正さえすれば、なるほどこれはやり直さなければならぬ、たとい同じものを作るにしても、とにかくもう一ぺんほんとうの議会でやり直さなければならぬ、こう考えるのが民主主義でございませんでしょうか。そういうことをやらずに、ただ占領中にできたもので、大体差しつかえないからこのままにして置こう、それこそ封建的な考え方です。

自分がほんとうに決定権を持たなかった、みんなこれはスキャップが決定したのです。問題はそこです。最後の決定権が日本の議会にあったかスキャップにあったかの問題ですから、最後の決定権がスキャップにあったことだけは、だれが何と言おうと間違いないことです。そんな最後はスキャップの許可によってきまったような憲法は、われわれが作った憲法ではないのです。

またそういうわけでありますから、ある意味におきましては、議会というものはとにかくやろうと思えば何でもできるのです。何でもできるのにやらないのです。また議会がそういうことができぬと言われれば、それは議会が憲法制定権を放棄することです。それこそおかしなことでありまして、議会がやらずにだれがやりますか。議会というものは、国民の総意を察し、また国民のためにやるのが当然です。それが国民主権、それが民主主義ではございませんか。ですから、私は今の議会は怠慢だと考えておりますし、民主主義の立場からいって、一日も早くそれをやらなければならぬと考えております。

ところがそれをやらずに、こんなことは議会でできぬというのは、みずから議会の権力を放棄し、民主主義を放棄するものです。ですから、飛鳥田先生が幾ら何と言われても私は承服できません。

○山本委員長
飛鳥田君、どうぞ結論をお急ぎ下さい。

○飛鳥田委員
どうぞ一つ先生、政治的な問題と、純粋に法律的な百題とを分けて御説明をいただきたいと思うのです。

私のお伺いいたしておりますのは、第一にお伺いいたしましたのは、占領軍の指図によってその縁由が作られたということならば、これを議定いたしました国会に自由意思があったかなかったか、もしあったとすれば、それは有効だと言わざるを得ないと思うのです。なかったというならば、現憲法は無効だと言わざるを得ないと思うのです。

それを、今この国会がどう処理するかということは政治的な問題です。でありますが、もしそういう意思の自由のないところにでき上ったものだとするならば、先生は、占領軍命令だと規定をなさるか、それでなければ、憲法として無効だとおっしゃるか、この二つしか私はないように思うのです。

私も法律で飯を食っておるのですが、意思の自由のないところにほんとうの法律行為というものはないというように教わって、そのまま覚えておるつもりですが、いかがですか。

○神川公述人
それは飛鳥田先生、自由意思とか意思表示の自由というものは、占領中はございません。

占領中は、たびたび申しましたように、武力的絶対独裁制でございまして、あらゆるものはスキャップが規律いたしているのであります。でありますから、実に空前の厳格な検閲制度をやりましたことは御承知の通り。とにかくいかなる日本の政府も、いまだスキャップのような検閲制度をやったことはございません。

昭和二十三年ごろに至りますまでは、あらゆる出版物の事前検閲をする。飛鳥田先生も御承知でございましょう。新聞だろうが雑誌だろうが、あらゆるものは事前検閲なんですから、スキャップの意思に反するものが出ますかね。また外国のジャーナリストもそれに非常に反対しまして、実に日本ほど言論の自由のないところはないと言って憤慨した。そういう憤慨をした人は、わずかに三日なり一週間で退去させられてしまった。

でありますから、占領中の日本ほど言論の自由のないところはなかった。現に私などは、追放を受けておって、全然言論の自由はなかったのです。ですから、そういうような言論の自由というものは、ほんとうの言論の自由ではございません。

言論の自由というものは、いかなる権力の制限も受けないものでなくてはならぬ。ところが絶大なる権力の制限を受けておるのですから、それでドイツの国民というものは、とにかく占領下においては、自由な意思表示だとかなんとかいうことは絶対にできないから、民主憲法はできないといってはねつけた、それがほんとうではありませんかね。とにかく自由意思が……。

○飛鳥田委員
先生の御意見は、私たちはもうかなりよく伺いました。私のお伺いしているのは、結論として、現行憲法は占領軍命令にすぎないとおっしゃるのですか、それとも無効の憲法だとおっしゃるのですか。その点だけをお伺いしておるのです。

○神川公述人
私はたびたび申しましたが、国際法上は無効であると思っております。ただ国内法上はまた別の問題であると考えております。

○飛鳥田委員
国内法的には、それでは占領軍命令ですか。

○神川公述人
国内法的には、むろん占領軍命令ですけれども、それをどう取り扱うかということは、日本政府なり、あるいは議会なりの方針によるわけです。

○飛鳥田委員
国際法的には無効であり、国内法的には占領軍命令である、こういう御結論をいただいたわけですが、そういたしますと、その上に立っているこの議会などというものも、占領軍命令の延長でしょうか。

○神川公述人
私は、さっきから申しましたように、まだ日本は、占領状態をほんとうには脱していないと考えております。そういう占領中の法規をすべて改正されませんから、そういうものを全部改正されたら、私はほんとうの議会だと思います。

○飛鳥田委員
大へんありがたいことで、私たち憲法による議員たることを先生から否認をせられたところでありますが、最後に、第二の問題としてお伺いしておきたいのは、この憲法に対する改正論は、ニクソン副大統領が百本にやって参りまして、日本にこういう憲法を持たせたのはアメリカの間違いだった、こういうような声明をいたしました。

続いて国務省の方から、一九五四年は憲法改正準備の年、一九五五年は憲法改正の年、こういうようなプログラムが出されて参りました。

こういうようにアメリカの意向が変って参りますとたんに、日本国内における憲法改正論が、あたかも解き放たれたようににわかに出て参りました。こういう点から考えて参りまして、私たちは現行憲法の改正については、うわべにおどり出ていろいろ議論をなさっておる改正論者よりも、もっと奥に、日本の憲法を改正せしめようという何者かが動いていると見ざるを得ないわけです。

また先ほど先生も、アメリカも喜ぶだろうというお話でありましたが、こういうところにむしろ重点がありはしないか。日本が昭和三十五年度に三十五万の軍隊を持たなければならないというような約束をしてきたそうであります。こういうことを実現いたして参りますためにも、またアメリカが最近日本に対する戦略的な方向を変えて参りました点から見ましても、私たちはそう推定せざるを得ないわけです。

先ほど来先生のお話を承わっておりますと、非常に先生の個人的な純粋なお気持から、いわゆるナショナリズムの立場から改正論をお唱えになっておるようですが、しかし個人がいかに純真にナショナリズムの立場から改正論を唱えようとも、実はそれは客観的な大きな流れに逆に利用されていくんじゃないかというような危険を私たちは感ずるわけです。

先生のお説も、意図するとしないとにかかわらず、結局はアメリカ製の憲法改正論の手助けをなすっているという結果に終りやしないかということを、私たちはおそれます。そういうような点についても、先生ほどお考えになっていらっしゃいますか、伺わせていただきたいと思います。

○神川公述人
飛鳥田先生のような、そういう心配を持っていらっしゃる方がたくさんあると私は思います。でありますから申しまするが、少くとも私は、昭和二十六年追放解除と同時にやり出したのであります。まだマッカーサーもおったのです。

マッカーサーは五一年の四月十六日に日本を去りましたが、私は、マッカーサーがおるころからやり出したのです。それからリッジウエーの時代を通じまして、猛烈に私はやったのです。今の憲法というものは占領憲法だ、実はそういうことを言い出したのは、日本において私が初めてなんです。日本人はそのことを知らなかったのです。ですから、私はアメリカのためにするとかなんとか、そんなことを考えたわけでは決してないのです。

のみならず、一体アメリカのニクソンであろうがだれであろうが、とにかく初めは日本の軍隊を禁止し、またやがて必要があれば軍隊を作ってくれなどというようなことは、非常にステーツマンシップがないと思う。私は今度ダレスが来ますから、そういう注文を出しておきました。アメリカ人は、もう少しステーツマンシップを持て、私は、その点アメリカ人は確かにはなはだけしからぬと思う。

しかしながら、われわれは、決してアメリカのために再軍備するとかなんとかいうようなことは、全然考えておりません。むしろ僕などは、とにかく日本は再不備をしなければ国家にならない。いつまでも植民地、属国だから、とにかくそれを脱却するには、どうしたってまずみずから守らなければいけない。ですから、アメリカの勢力を排撃するために私はやっておるのであります。

いや、その結果は排撃にならない、かえってアメリカの勢力に屈服することだという御意見ですが、私はそうは思いません。今の状態のままで続いていったならば、いつになったらアメリカがのくか、いつになったらアメリカの軍隊の基地が解放されて独立日本ができまするか、実は、それを私はお聞きしたいのであります。

私は、とにかくそんなことでは日本は水久にアメリカの植民地であるから、何としてもそういう境遇を一日も早く脱却したい、そういう念願から行うわけなんであります。

○飛鳥田委員
今お説を伺って、先生のお説はよくわかっておるのですが、現にその危険を私たちは感ぜざるを得ない証拠を持っているわけです。

たとえば、鳩山一郎さんが自由党の憲法調査会に御出席になりまして、憲法改正の必要を論ぜられた中で、こういうことを言っておられます。アメリカと日本はいつまでも緊密な関係を保っていかなければいけない。ところが自分の見るところでは、最近この関係は下り坂である、冷却に近づきつつある。従って、アメリカとより親密になるために一刻も早く憲法を改正しなければなら、ないとおっしゃっているわけです。

これでは、まるで失われていく愛情を取り戻そうとするために厚化粧をする娼婦に似ていると思うのです。

先生は、個人としてナショナリズムの立場に立って憲止改正を唱えられている。だが、現実に一国の責任ある方々がこのような考え方に立って今憲法改正を行おうとしているのです。もしそうだとすれば、先生の良心的におっしゃることが、実はそういう方々のお手助けをなされる結果に終ってしまいはしないか、こういうことを私たちは哀心からおそれます。

はなはだ恐縮でありますが、最後ですから述べさせていただきますが、いろいろな憲法改正、あるいは憲法改正を否とする考え方、こういうことを述べます場合に、それがどういう効果を生むか、国内的に国民にどういうものを与えるかということを一つ慎重に御考慮をいただいて、お述べをいただきますようにお願いしたいと思います。もちろん私たちの社会党も、そういうことを十分考慮して述べるつもりでありますが、どうぞ一つこのことを最後にお願いをいたしまして、僕の質問を終ります。
[データ]
第24回国会 衆議院内閣公聴会議録 第1号
昭和三十一年三月十六日(金曜日)
午前十時三十二分開議
委員長 山本 粂吉君

質問者
[自由民主党]
大坪 保雄君
辻  政信君
眞崎 勝次君
山崎  巖君

[日本社会党]
飛鳥田一雄君
石橋 政嗣君
片島  港君
茜ケ久保重光君

公述人
東大名誉教授  神川 彦松君  :改憲
法政大学教授  中村  哲君   :護憲
都立大学教授  戒能 通孝君  :護憲
―――――――――――――
本日の公聴会で意見を聴いた案件:憲法調査会法案について
―――――――――――――

<関連エントリー・リンク>
資料:【半世紀前の改憲論争】① 神川 vs 石橋
資料:【半世紀前の改憲論争】② 中村 vs 辻
資料:【半世紀前の改憲論争】③ 神川 vs 飛鳥田


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author: かずひろ

全文読ませて頂きました

非常に参考になる議論ばかりです。

かずひろさんに言っても仕方ないのですが、
飛鳥田氏が憲法無効宣言をしたら日本の国会も無効化するなどと述べていますがこれは間違っていると思います。

無効を宣言するのは内閣であり、国会ではありません(勝手な希望を言うと、国家元首たる陛下に無効宣言をしていただきたいのですが。そうすれば「日本国憲法」破棄は明確な国家意思となります)。
無効宣言をし、旧憲法の改正をすぐに行えば、政治的空白は誕生しません。

  • 2007年12月30日00時24分
  • 編集
  •  RES
Re:全文読ませて頂きました
耕さん、コメントありがとうございます。

>無効を宣言するのは内閣であり、国会ではありません

さすが耕さん、私もその通りだと思います。無効の確認をするだけですので、閣議決定した後、内閣総理大臣が無効宣言すれば足りると思われます。
ただ、国権の最高機関は議会ですので、現実問題としましては、議会の決議が必要になるのではないでしょうか。
2007年12月31日18時38分 かずひろ
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資料:【半世紀前の改憲論争】① 神川 vs 石橋

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