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2007.11.07

今こそ、年金制度を考えよう!(β版)

pyramid.jpg年金の議論が熱い。

主な論点は、次の2点です。
第1に、社会保険庁による「消えた年金問題」。
第2に、基礎年金の財源を全額税金にするか、半分税金にするかの「財源問題」。

しかし、肝心の制度自体は大丈夫なのでしょうか。

年金に関心が高いうちに年金制度そのものを議論する必要があることを強く訴えます。「鉄は熱いうちに打て」と言います。今、考えなければいつ考えるのでしょうか。「これは、まずい!」と思ったときにはもう遅いのです。

今回のエントリーでは、年金制度について考えてみます。



aki-line.gif

1・最大の問題は世代間格差

年金制度とは、突き詰めると「負担」と「給付」の制度です。つまり、誰が「いつまで」「いくら払って」(負担)、誰が「いつから」「いくらもらうか」(給付)ということが問題になります。
生涯給付負担比率
ニッセイ基礎研究所「年金ストラテジーMARCH2000」注:pdfファイル)より

ちょっと資料は古いのですが、上図は、平成12年の年金改正を睨んでニッセイ基礎研究所が分析・作成したものです。その後制度改正がなされていますので、この数字をそのまま使うことは妥当とは言えませんが、他に一覧性のある資料がなかったので参考程度にみてください。(なお、図をクリックすると図の全部を見ることができます。)

1930年生まれの人(2000年時点で70歳)は、定年まで働いてもらったお金のうち7%だけを保険料として支払い、35.1%を年金として受け取ります。年金として受け取る額は支払った額の約5倍にもなります。

これに対して、1990年生まれの人(2000年時点で10歳)は、生涯賃金の21%(約3倍)を保険料として支払って、12.5%(半分以下)を年金として受け取ります。受取額は支払額の6割程度です。

支払った額より貰えないなら、預金した方がましですね。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?
原因は、年金制度の財政方式にあります。

2・「払わないともらえない」ではなく「お年寄りが困る」

年金の財政方式には、賦課方式と積立方式の2種類あります。
kaikaku9701.jpg図は読売新聞「年金改革Q&A」2005.5.18

「賦課方式」とは、 働く世代が支払う保険料が、その時点の高齢者に年金として支払われる方式です。

これに対して、「積立方式」とは、自分が払った保険料が積み立てられ、老後に利子付きで受け取る方式です。

では、我が国の公的年金の財政方式はどっちか。
左図のように、現役世代がお年寄りを支えますので、賦課方式が基本になっていることは、誰の目にも明らかです。

しかし、その名称は厚生労働省によれば、「修正積立方式」といいます。
日本の年金は、1944年に厚生年金保険法により積立方式でスタートしました。その10年後の1954年に新厚生年金保険法で修正積立方式へとあらためられます。

修正積立方式とは、引退世代への給付についてはその時の現役世代から徴収した保険料でまかなうことを基本 原則にしつつも、年金制度が成熟化(引退 世代の人口の比率が高まったのち高位安定する)していないときに徴収する保険料の中の一部を将来の給付原資として積み立てておき、年金制度が成熟化したと きに、引退世代に対する給付の一部をその積立金の運用収入でまかなう仕組みです。
jinkou-pyramid1930.jpg
実態が賦課方式であるにもかかわらず、「制度を始めたときは積立方式だった」、この1点をもって修正積立方式などという名称になりました。この名称は、私たちが制度を理解する上での障害になっているように思います。

まず、「払わないともらえない」という年金への誤った宣伝です。確かに現行制度では、25年以上保険料を払い続けなければ受け取ることはできません。しかし、制度の本質から言えば、「お年寄りのために払わなければいけない」と言わなければならないと思います。

次に、サラリーマンの奥さんに対して「保険料を払っていないのに年金を受け取るのはおかしい」、「共働き世帯と比較して不公平だ」、といった次元の議論がなされることがありますが、これは、サラリーマンの妻が引退世代の年金を支える義務を負うべきか否かの観点から、議論すべき問題です。

諸外国を見ても、ほとんどの国で賦課方式が採用されているようですが、財政方式を理解した上での議論がなされています。つまり、引退世代に対する義務をどこまで負うか、という観点からです。日本では、この点が非常に曖昧で、「自分の払った保険料は、退職後に自分で受け取るのは当然のこと。これは自分の権利だ」などという誤った認識の人は多いと思われます。

3・問題点(1):厚労省のいう「100年安心」は眉唾

kaikaku9101.gif
読売新聞(05.4.6)年金改革Q&A(1)厳しい財政大丈夫?「100年安心」は疑問
厚生労働省は、2004年の財政再計算によって、将来の年金像を次のように示しました。
・厚生年金の保険料率は、04年の13.58%から、17年の18.30%にまで引き上げる。
・厚生年金の給付水準は、23年以降も現役サラリーマン世帯の50.2%に維持する。

果たして可能でしょうか。今年の2月に発表された厚生労働省の試算によると、賃金上昇率2.5%、積立金の運用利回り4.1%で計算しているようです。賃金上昇率を大幅に上回る利回りを長期的に継続できる可能性はきわめて低いと言わざるを得ません。これは、単に政府公約の「所得代替率50%」を実現させるための数合わせにすぎないと思われます。

厚労省の試算が数合わせであることは以前から指摘されています。例えば、04年の財政再計算について05.4.6の読売新聞は次のように警告しています。
実際、関連法の前提条件は、すでに一部で崩れ始めています。

例えば、関連法は女性が一生の間に産む子供数の推計値(合計特殊出生率)について、今後1・31で底打ちして将来は1・39まで回復することを前提としています。ところが、現実の出生率は03年には1・29まで落ち込み、上向く兆しが見えません。

自営業者などの保険料未納率は、03年度には36・6%にのぼりました。関連法は07年度に20%まで低下させることを前提としていますが、このままでは難しそうです。

4・問題点(2):サラリーマンに頼ったドンブリ勘定

6月10日の日経新聞には、現在6割台の国民年金の徴収率を8割にまで引き上げるという目標の達成が困難であるとの記事が載りました。これを受けての経済学者・野口悠紀雄氏の意見を読んで私は驚きました。
『週間ダイアモンド』連載「超」整理日記2007/6/30より
それに、目標が8割でしかないことが、そもそもおかしい。本来であれば、10割を徴収できなければ、制度は破綻するはずだ。なぜ8割でよいのか?

この答えは簡単だ。不足分をサラリーマンが補填しているのである。

こうなる理由は、基礎年金の給付に要する費用を、各制度の加入者数で按分していないからだ。按分の際に用いられるのは、厚生年金や共済年金などの被用者年金については保険料を本来支払うべき者の数だが、国民年金については、保険料を実際に納付した者の数である。だから、徴収率が落ちれば、被用者年金 の負担は増えるが、国民年金の負担は増えない。
極端に言えば、社会保険庁や厚労省は、国民年金の徴収率が下がっても困らないのです。その分サラリーマンから取ればいいのですから。

5・問題点(3):企業負担が大きすぎ国際競争力の足枷に

現在、厚生年金の費用負担は労使折半となっています。これが、企業にとって、大きな足枷となっているようです。

私は、前回のエントリーで格差問題を取り上げ、格差の原因としてパートタイマー労働者の急激な増加を挙げ、その対策として労働者派遣法を元に戻すよう提言しました。派遣労働者の増加問題を労働法制の観点から論じましたが、この背景には、企業の社会保障費の負担増が耐え難いレベルにまで達していることがあると思います。

厚生年金は強制加入であるにもかかわらず、脱法・脱退する企業が後を絶ちません。海外移転を進める企業、派遣労働者に活路を見出す企業が増えているのも厚生年金の負担増に原因の一端があると思います。

「企業の国際競争力を確保するために、法人税を引き下げるべき。」との議論がよくなされますが、法人税は所詮、利益に対する課税です。それよりも厚生年金の負担増は、費用として確実に企業に重くのしかかります。企業の国際競争力を高めるためには、厚生年金問題を考える必要があります。

6・政策提言「給付年齢の引上げと給付額の引下げを!」

私のことを冷たい人間だと思う人もいるでしょう。しかし、持続的な制度設計をし日本経済の将来的な成長力を確保するためには、「給付開始年齢を今すぐにでも70歳まで引き上げ、現在の給付額を引き下げる」、これしかないと断じます。

抜本的な改革として財政方式を「賦課方式」から「積立方式」への変更(自分で積み立てた分を定年後受け取る方式への変更)も考えられますが、それには、今までの制度を一度清算しなければならず、その金額は膨大で事実上不可能であるというのが多くの識者の見方です。

厚生年金に関しては、現行の労使折半から負担割合の見直しが必要であると思います。もっと踏み込むと、厚生年金、共済年金など基礎年金の2階部分は、積立方式へ移行させるべきです。積立方式は、保険会社の得意な分野ですので、民営化も視野に入れる必要もあるでしょう。役所がやっていたのでは非効率なのは一連の不祥事で明らかです。

これは、国民年金と厚生年金をドンブリに入れ運用してきた今までの方法を是正するのにも有効です。ただし、企業が払っていた厚生年金部分を従業員の賃金に上乗せするかが、新たな課題となりそうですが…。

7・年金改革の最終列車はとうの昔に通りすぎた

これまで、年金制度の抜本的な改革が必要であることを述べてきました。それが可能かどうかは、我々有権者にかかっています。この点を分析した有名なレポートにIMFが2004年6月に出した国際経済展望があります。作家の幸田真音さんが、色々なメディアで紹介していましたので、ご存知の方も多いと思います。

三菱総合研究所MRI TODAY2005.4.13より一部抜粋
「終列車が発車するのは・・・The Last Train for Pension Reform Departs in...」。昨年9月、IMF(国際通貨基金)は、その世界経済展望(World Economic Outlook)の中で年金改革の機会について、こう警告した。先進国の多くの人々は、50歳を超えれば年金受給予備軍として年金受給者の立場で物事を考えるようになる。だから50歳以上が(すなわち、この年金受給者と予備軍が)、有権者のマジョリティとしての代表権を握る前に改革すべしというのだ。この 50歳以上が有権者の50%を超える時が終列車の発車時刻という訳だが、それはいつなのか。英国ではまだ36年先、スウェーデンでは21年、ドイツ、フランス、米国で11年、最短はスイスとフィンランドで6年先だという。それまでの期間が年金改革の機会だというのだ。その機会を逸すると年金受給者と予備軍が社会の主役となり、改革が実行しにくくなるという考えだ。

では日本はどこに行ったのか?実は昨年(2004年)、50歳以上が有権者の50%を超えてしまった(総務省推計値)。終列車は出てしまったのだ。IMFからすれば、日本は既に見限られた国なのだろうか。
yukennsya-tohyousya.jpg
シロクマの屑籠(汎適所属)2007.4.4:
現在の世代別投票率が続く限り「高齢者のほうを向いた政策」は終わらない
上図は、2003年の第43回衆議院議員選挙の年代別有権者数と投票数を示したものです。ご覧のとおり、有権者数は20-40歳代と50歳代以上で拮抗していますが、投票者数で50歳代以上が大きく上回ります。 年金制度の抜本改革がいかに難しいか、ご理解いただけると思います。

8・参考サイト

・読売新聞>特集>年金改革>年金Q&A
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/special/43/kaikaku_top.htm
・厚生労働省年金局:公的年金制度に関する考え方(第2版)
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/nenkin/seido/index.html
・野口悠紀雄on line:「超」整理日記
http://www.noguchi.co.jp/essays/
・吉岡一同おとうさんのブログ:公的年金の政治経済学
http://pokemon.at.webry.info/200706/article_16.html
・岸功ゼミ:「少子高齢社会と社会保障」・・・特に伝言目次
http://www.geocities.jp/kguik/public_html/index.html
・平成18年版 厚生労働白書:
平成16年改正による持続可能な公的年金制度の構築
http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wpdocs/hpax200601/b0100.html
・年金改革の論点( 小塩 隆士) 注:pdfファイル
http://www.esri.go.jp/jp/forum1/020930/kicho101.pdf
・allaboutセカンドライフ:年金改正について
http://allabout.co.jp/finance/nenkinreceive/subject/msub_kaisei01.htm


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年金問題は難しいです。

久しぶりに年金問題に関して、私も考えて見ました。
そもそも、国民年金は国民皆年金となった初めからすでに間違いがあったと私は考えます。
その当時年金受給者に当たる世代からは徴収されず、受給していた訳ですから、初めから赤字で始まったものだと考えます。
それに、年金の種類が幾多にも分かれていること事態が問題だと思います。その社会保障の根幹を成す部分が年金と保険ですよね。年金にしても、保険にしても、国民全てが同じ制度であるべきではないかと思うのです。
制度間の格差もかなり大きい問題だと思います。この格差を埋めないことには、社会保障を運営する方々のスリム化も出来ないし、当然ながら徴収もうまく出来ないのではないかと思います。

駄文で失礼しました。

数字に強いですか

計算が出来るなら
14,100円+14,100円(国負担)を毎月、40年間積み立てて、45年間利率4%で運用してみなさい。4千万円を超えますよ。
そうすれば、国民年金だけで、月25万円位もらえますよ。積み立て方式で問題ないのに、政府が誤魔化したのです。

  • 2008年03月18日21時36分
  • 八目山人
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